ジョン・ポリス・スプラッターズクラブ

城戸が2022年に観たスプラッター映画

チャイルド・マスター(2008)

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アメリカン・ニューシネマ風の殺人ロードムービー。頭のおかしい姉、喋ることのできない弟と、マジでかわいくない腹話術人形が繰り広げる珍道中。これはもう自信を持って傑作であると断定したい。どう考えてもこんな映画に何かを期待するワケがないし、この監督マーク・ジョーンズはかの『レプリコーン』の監督として知られる男であるが、そっちがまったく合わなかった私からすればなおさらであるが、強いのをくらった。


腹話術師として成功を掴むためハリウッドにやってきた女性が幼い姉弟を残してヘロイン中毒で死去、残された姉弟と人形の3人で腹話術師として稼ぐため、盗んだ赤色のマッスルカーでラスベガスを目指すという、いかにもニューシネマ的というかヌーヴェルバーグ的というかテキサス的な幕開けながら、それはすぐに戯れの模倣へと成り果て、ポップな音楽に乗せてただ邪魔者を殺しつつヒロインと人形の掛け合いが繰り広げられるという、なるほどこれは何のことはない、グランド・セフト・オートなのである。

 

本作が小学生のプレイするグランド・セフト・オートそのものなのであると分かったところで、ならば物語なぞに一切期待できるわけがないのだが、しかしアイデアに溢れた展開(特に終盤、警官の〇〇を使って〇〇〇をするシーンは感動した)やギャグセンの高さに、人形の吹っ飛び方、ニューシネマ的幕開けをすぐに捨て去る(時折スコセッシみたいなイメージが挿入されたりするが)ナメた態度に至るまですべて最高。画面内で役者が動きまくるのも素晴らしい。ヒロインが車をケツから順に5回くらい蹴り入れていくトコとかマジで良い。強盗に入った酒場で、ステージで歌ってたラッパーに「音楽を聴かせて」と銃を向けるヒロインに「仕方ねえな、いいぜ」つって歌い始めるラッパーのシーンとかちょっと泣きそうになるくらい。起こってること全部好き。

 

「何の声だ?後ろに何が乗ってる?」

「うちの飼い犬です。名前はタイタニック。一度沈めたことがあるからです」

 

というかヒロインがあまりに魅力的すぎて、これマーク・ジョーンズ自身が彼女に恋をしているんではないか、物語がほとんど破綻してるのは、彼女を目の当たりにしたマーク・ジョーンズが彼女をもっと撮りたいがために現場で脚本を書き換えまくったからではないか…とかそんなことまで大袈裟に考えてしまうくらいの、もっといえば、事故った車から白い煙がシューって出てるってただそれだけのシーンでも、それが映画にとってやたらに神聖な煙に見えてしまうくらいの魔力を持った映画である。俺が褒めすぎてるのは分かってるし、何ならわざと過剰に褒めている部分だってあるけども、とにかく近くのツタヤにコレが並んでたって人は迷わず借りて観て一緒に飲み行ってネットフリックスの悪口でも言いましょう