ジョン・ポリス・スプラッターズクラブ

城戸が2022年に観たスプラッター映画

ストライク・バック(2007)

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田舎に行ったらヤバい一家に捕まってヒドい目に遭わされるという悪魔のいけにえプロットはこれまでに散々と量産されてきて、当然、駄作もそれなりに生み出されてきたわけですが、私が「出た、悪魔のいけにえ」と駅前で知り合いを指さすかのようにプロットの再利用を目の当たりにさせられてきた凡百のB級ホラーたちに、やはり傑作である『悪魔のいけにえ』には敵わないとしても、低予算なりに、一体どこに優れた部分があるだろう、と注目するのはいつだって暴力描写、残酷描写だったわけです。

 

どうせ『悪魔のいけにえ』には敵わないのだから、同じプロットを使うのならばせめて腕が飛んだり顔面がつぶれたりするのを見せてくりと言わんばかりにあらゆるディテールをすっ飛ばして血みどろシーンにばかり目を見張っていたんですから私も相当に不誠実ですが、そもそも人生というのは限られているのであって、死ぬまでに一体いくつの顔面破壊が見られるのだろう、という実に切実なまなざしでこの『ストライク・バック』も眺めていたのですが

 

海沿いを走る車を遠くから撮ったり近くから撮ったりを繰り返すオープニングに「え?」と思ったりはしたものの、都会でそれなりの暮らしをしているように見える夫婦が船遊びに出て、遭難して、たまたま流れ着いた島で助けを求めようとするも電話がない、仕方なく鍵の開いていた民家に侵入し、電話を拝借しようとするが、不運にも家の主が返ってきてしまい…という幕開けのテンポの良さ、悪役の造形の良さ、アイデア溢れる残酷描写の良さ、ここで言ってしまいますが本作は大傑作でして、そして何より、中盤でヒロインがDIYする武器のすさまじさといったら!

 

イヤ~な空気感の演出のうまさや緩急のうまさなど、褒めるポイントはいくらでもあるんですが、やはりホラーファンとしてはヒロインが武器をDIYするシーンがあると本当にうれしいので、その話しかできなくなってしまいます。かといってネタバレするわけにもいかないので、一体どこでレンタルできるのか分からない(私は宅配レンタルを利用しました)本作を見て、ヒロインが納屋で作る武器の造形と、その炸裂を是非観てほしいです。ちょっと、泣いてしまうくらい素晴らしいです。例えば納屋でなぜかバズーカが完成してしまうといったような荒唐無稽さでなく、あくまで現実に即したうえで、最大限に魅せてくれる。そう、本作の実に巧妙な点はリアリティラインの操作であって、中盤の伝説的DIYすらも助走として機能する終盤の一大活劇の気持ちよさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。どうして本作が眠らされているのか理解できません。